[8月の課題]
〜音痴は音痴なんぼ一八番を歌っても〜
NHK総合テレビに「のど自慢」(日曜12:15〜13:00)という歌番組がある。視聴者
参加番組だ。以前は「しろうとのど自慢」と題され、カネ1つの出場者も珍しくなか
ったが、現在では貴重な存在になった。カラオケの普及で素人も歌がうまくなった。
タイトルから「しろうと」が取れた証左でもある。
毎週出場者たちは老いも若きも、情感たっぷりに、それぞれの「おはこ」を熱唱し
ている。お茶の間では、「うまいなあ、カネ3つや」「惜しいなあ。もうちょっとや
」などと、しろうと審査員を気取っている。私は、出場者が登場して番号と曲名を言
っただけで、瞬時にほぼカネの数が当てられる。声量、声の心地よさ、落着き具合な
どから判断できるのだ。歌よりも審査を楽しんでいる。
ところで、「おはこ」って何だろう、と思ったことはありませんか。「じゅうはち
ばん」ともいい、「おはこ」は漢字で書くと「十八番」※2となる。江戸時代末期に
、歌舞伎の七代目市川團十郎が、市川家の得意としていた荒事の演目18種※1を選
んで「歌舞伎十八番」※2と呼んだ。ここから、もっとも得意な芸や技の意味で広く
用いられるようになった。また、江戸時代では、高価な書画や茶器などを丁重に箱に
入れて、「真作である」ことを示す鑑定者の署名である「箱書き」を添えた。ここか
ら、「本物の芸であると認定された」という意味で、「おはこ」と言うようになった
……と、ものの本にある。
私は歌の審査は得意だが、歌うのはからっきしダメである。カラオケの奴がマイペ
ースで、私にちっとも合わせてくれない。カラオケは僕を音痴にしてくれる。なんぼ
おはこを歌っても。
※1 18種は、『勧進帳』、『不破』、『鳴神』、『暫』、『不動』、『嫐』、『象
引』、『助六』、『押戻』、『外郎売』、『矢の根』、『関羽』、『景清』、『七つ
面』、『毛抜』、『解脱』、『蛇柳』、『鎌髭』である。
※2 十八番と書いて「おはこ」と読ませた初出は、柳亭種彦が文化12年(1815年)か
ら天保2年(1831年)にかけて書いた『正本製』(しょうほんじたて)。また七代目
團十郎が歌舞伎十八番を初めて公表したのは天保3年(1832年)。
それでは、例によって上記の中から出題します。
■2025年8月(No.169)
題:「素人」 (進 選)
題:「箱」(箱庭の箱) (かずよ 選)
題:「署名」 (弘 選)
題:「気取る」 (航太郎 選)
(各題2句出し)
◎今月の締切:8月24日(日)正午必着
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